妊娠

2004年2月5日
 明け方に近い夜。
 今のマンションよりも少し広めのマンションに住んでいた。
 周りはとても静かで、これから寝ようかという時間だった。

 股間から液体が漏れたのを感じた。
 見なくても血液が流れたのだとわかった。
 隣の部屋のドアを開けると、知合いの男性がいた。
 なんでこんな時間にこの人がいるんだろう。
 Bが私の隣にいて、今夜は彼を泊めると言う。

 私の足の付け根からは、赤い液体が足を伝って流れ落ちていく。
 普段なら体の汚れが流れていくようで不快に思うことはないのだが、何故か気持ちが落ち着かない。
 白いスカートが汚れていくのがいやなだけではない。
 何かが。
 いやなのだ。

 見ているうちに透明な液体や不透明なものが混ざったどろりとした固まりが出てきては落ちていく。
 そのうち流れてはいけないものも流れてしまうのではないかと不安に感じ始めた。
 そうだ。赤ちゃんが。

 私のおなかには赤ちゃんがいる。
 そんなに目立たないふくらみには命が宿っている。

 どこをどう歩いたのか、私は病室にたどり着いていた。
 母がやってきて、妊娠していたの、と驚いた。
 まだ産まないのかと言うので、さっき医者に破水を待ちましょうと言われたと答えた。

 母に言われて、自分も考え始める。
 はて、いつの間に妊娠したのだろう。
 避妊をしているのに、そんなことがあるだろうか?

 ふと、気がつく。
 妊娠してない、私。

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